「陽汰が嘘をついているかもしれないが、それ以外に考えられる事と言ったら、他の者がやっているという事なんだよ。陽汰という人間の存在に気が付いて、協力させようと企む者がね」


 誰も話をしないので、お婆ちゃんはそのまま続けた。


「とにかく陽汰の気配を消して、手中におさめんとする者が……どこかにいるかもしれないという事だよ。あくまでも予想なんだがね」


 そう言い終わると、キッチンの方へ行ってしまった。

 
 ――しばらく沈黙が続いた。



 聞こえてくる音といえば、お婆ちゃんがキッチンで何やら作っているであろう音だけだ。

 そんな中、ずっと黙っていたネムが口を開いた。


「考えても分からないし……それにヨータが無事だったんだからそれでいいじゃん。考えなくちゃいけないことなのかもしれないけど、今はこのままでいいじゃない」