「老婆よ。この場に我を呼んだ意味を簡潔に述べよ」
ツキヨミとは違う喋り方だ……そう思いつつ怖くて目を開けられないネムは耳を澄ますことにした。
「そうカリカリしなさんな、ヘルハウンド。この場にお前さんを呼んだのは他でもない、このヤルモを食べてほしいからだよ」
お婆ちゃんは、恐怖で動けないヤルモを指し、さらに続けた。
「報酬は、このヤルモだ」
――ディルクはありえないと言った顔でお婆ちゃんを見た。
ヘルハウンドは最も残忍な生物なのに、ヤルモを殺してほしいが報酬はヤルモなどという交渉をするなんて。
ヘタすれば我々も喰われてしまうし、この人間の事だって気付いていように。


