そこに居たのはケルベロスのような大きい生き物だった。
二メートル五十はあろうかという巨大な体、そして赤黒い色。
骨だけのように痩せほそった肉体で、ところどころ皮膚がはがれて血が滲み出ている。
目はどこにあるかわからないほどに顔の皮膚が剥がれ、口は顔の半分以上裂けている。
耳は尖り気味で中途半端に上を向いている。
――赤黒いというよりは血が滲み出ていてそう見えたのかもしれない。
じっと見ていられず、ネムは思わず目を逸らした。
これ以上見ていたら自分が襲われてしまうような感覚に陥ったからだ。
もちろんそんな事はないだろうが、お世辞でも綺麗な身なりの幻獣とは言えない。
それに恐怖のあまり、じっと見ていられないのである。


