しばらく走っていると、先のほうで何やら気配がする。
三人は立ち止まり、様子を伺うが、霧のせいでハッキリと確認できない。
「何か嫌なニオイがするわ。気配とかじゃなくて。それに、あの霧の中に大きい影と小さい影が二つ見えるの」
ネムは、影に気付かれないよう小声でそう告げた。
「ネムもかい。しかしね、何か様子がおかしい様に感じるんだが、ディルクはどう思う?」
「分かりかねます。ただ、小僧の様なニオイはしますが」
ディルクはネムの顔を見ないようにして答えた。
見なくても、今ネムがどんな表情をしているか分かったからだ。
――何分か経ったのだろうか?
じっと息を潜めて立っていると時間の経過は分からないものである。


