「今、なんていった? あたし、そんな小さい頃から魔法使えてたの?」
「ま、まぁあれだ。たまたま成功したんだろう。当時のお前が中級魔法なんて使えるはずがない」
ディルクは少し咳き込みながら答えた。
――まるでコットンキャンディがノドにはりついてしまったと言わんばかりに。
「そうだよね! あたしがそんな高度な魔法をちゃんと使えてたら今頃は大魔法使いだもの!」
ネムは悲しそうに笑うと、次は魔法薬の材料を売っているお店に向かった。
あまりの人混みに何度も潰されかけたが、その度にディルクを守り、人の大群を器用に交わしていく。
空は相変わらず灰色のままで、もう6月になるというのに寒気さえする。
ディルクを抱っこしているから温かいはずなのに、ネムは不思議に思った。


