「いいね、陽汰。何があってもそのフードを取るんじゃないよ。首を見られたら終わりだ」
「はい、もちろんです」
陽汰のまっすぐな瞳と、真剣な返事を聞いてからお婆ちゃんは市場に向かって歩き出したので、ネム達も後を付いて行った。
「ヨータは市場に来るの初めてだよね? ヨータの世界にも市場はあるの?」
ネムは他の人に聞こえないよう、なるべく声を小さくしている。
「もちろんあるよ。地域によってだけど……」
「あたしの住む世界みたいに、栄えてるところと、田舎のところもあるの? あのね、あたしのところは田舎なの。昔は大きな街にいたんだけどね、ある理由で引っ越してきたんだって~」
興奮して話し出すネムを遮るようにお婆ちゃんは話し出した。
「いずれ分かるだろうよ。ここに越してきたわけを。それよりあまり大きな声で話すんじゃないよ。いくら人混みとはいえ、誰がいるか分からないからね」
「……ごめんなさい」
悲しそうな顔のネムを励まそうとディルクはネムの指をペロリと舐めた。
「ありがと、ディルク。いつもそうしてくれるね。嬉しいよっ」


