「今日の市場は人が多いようだな。これであの小僧も、簡単に見つかるまい」


 それを聞いてネムはすかさず反論した。


「彼にはちゃんと名前があるのよ!!」


 陽汰の事になるとすぐムキになるネムを、ディルクは心配そうに見つめることしか出来なかった。


 これ以上深い関係にならないように願うばかりである。


 馬車通りを抜けた後、左に曲がりまっすぐ行ったところに市場がある。


 今日は、そこでお婆ちゃんや陽汰と待ち合わせなのだ。


 人があまり来ない、市場から少し離れた星の実がなる木でネムはホウキから降りた。