ネムがホウキにまたがり、空へ飛び立つと今にも雨が降り出しそうな空がそこにあった。


 灰色で、気持ちまで沈んでしまいそうな空。


 なぜか嫌な気持ちになるのでネムは梅雨が一番嫌いだった。


「なんで空とか天気とか魔法でどうにかしないの?」


 小さい頃から抱き続けてきた疑問。


 両親はお店が忙しいので、何かあるといつもデイルクに質問や相談をしてきた。

 その度にディルクはちゃんと答えてあげたし、慰めもした。

 同年代の友達が近くに居ないネムにとって、ディルクはかけがえの無い存在だった。


 もし居なくなったら……と考えたときには一日中憂鬱な気持ちになった。


「珍しく良い質問だな。我らが王は自然を好む。それゆえに、だ」


 ネムが寂しい時も嬉しい時も悲しい時も、どんな時も傍に居た。

 もしかしたら守り猫というより兄妹という存在なのかも? とネムは思い始めていた。