しばらく沈黙が続いた後、陽汰が口を開いた。
「あの、ネムさん。ここ、魔法の国? なの?」
「うん、そう。魔法使いの住む世界。あたしも、お婆ちゃんも、みんな魔法使い」
二人きりで恥ずかしいのか、ネムは栗色の髪の毛をいじりながら答えた。
「そしたら――あの猫も??」
「ディルクって言うの。猫なんだけど、猫じゃないわ。あたしの守り猫。ディルクが魔法を使ったのを見たことないわ。どうなのかな」
ネムの返事を聞いてすかさず陽汰がまた質問する。
「守り猫?」
「うん、この世界に伝わるものなの。赤子と同じ日、同じ時間に産まれた猫は、赤子の守り猫となり、共に成長するだろうって!」
得意げに答えたネムを横目に、陽汰は色々考えている。
そして――
隣の部屋ではディルクとお婆ちゃんが静かに話し合っていた。


