「あれ……ベティは一緒じゃなかった?」
不意に陽汰が口を開いた。
「犬を散歩してて……ベティって名前なんだ。黒いラブラドールだけど見なかった?」
「いぬ……何?それ。バッグか何かかしら?ヨータの周りには何も落ちてなかったと思う」
ディルクなら何か知っているかもしれないと思い、話を振る。
「ねぇ、ディルクは何か見付けた?」
ディルクはしばらく考え込んだ後、陽汰から眼をそらして答えた。
「何も見ておらぬ」
その様子を察したお婆ちゃんは話題を変えた。
「きっと、向こうの世界にいるだろうよ。まぁ、暫くはうちに居ていいからね。でも勝手に触ったり、外に出たりするのだけはやめておくれ」
「――あぁ、それとネム。あたしはディルクと話があるからそこで待っていてくれるかい」
そう付け加えると、お婆ちゃんはディルクを抱きかかえ、隣の部屋に行ってしまった。
――ネムと陽汰を残して。


