相変わらずディルクの体から薄い玉が溢れ出てきていたが、徐々に煙が立ち込めてきた。
煙というよりも、濃い霧と言った方が正しいだろうか?
――そしてディルクの体から眩い光が発せられた!!
ネムは目を閉じ、自分の中で十秒数えてから目を開けた。
もしかして童話のようにディルクが生き返るんじゃないかと期待しながら―
だがそこには……誰も居なかった。
濃い霧は消えていなかったがディルクの気配はもう既に消えていた。
「さよう、なら……」
また涙が溢れだしそうになったが、一生懸命こらえてお婆ちゃんの方へ歩き出した。
振り返ったらいけないような気がした。
「前を見なくちゃ……ディルクに失礼だもの……」


