ネムは陽汰を傷つけたくなかった。
自分の意思とは反対にこっちの世界に来て、皆から疑われ、帰る術が見つかる前に利用され……
そして今イフリートに完全に乗っ取られている。
何も悪くない陽汰を傷付けるなんてとてもじゃないけど考えられなかった。
「でも、あの人間は悪くないのよ? だって……意思じゃないのに……」
「そなたと人間の間に何があったかは分からぬが、あの人間は何かしら企みがあってこの地に参ったようだ」
ネムは意味が分からなくなってきた。
「だって……いきなり光に包まれたって、そしてあいつが、イフリートが偶然陽汰を見付けたって……」


