「多分、こっちの方だったと思うんだけど」
いつの間にか赤い物体が消えていたので、少しガッカリした様子でネムは言った。
辺りを見渡しても、何も見えず、音もしない。
急に怖くなってきてしまった。
――だが、ネムは見付けてしまった。
草むらの陰に横たわる弱々しい少年の姿を。
「あ……ディルク、見て。男の子よ。しかも、変な服。更にボロボロ。どこの国かしら」
「ネム、帰るぞ」
突然のディルクの言葉にネムは唖然とした。
「な、何言ってるの? この子気を失ってるんだよ!? 可哀相でしょ!?ディルクはそんな冷たい子なの!?」
「……いいから、帰るぞ。でなければお前を気絶させ連れて帰るしかない」
ネムはディルクを睨んだまま、動こうとしなかった。


