イフリートは勢いよく吸い込んだ息を吐き出した。
それはただの息ではなく、灼熱の炎だった。
物凄い突風と共に炎の渦……
イフリートのすぐ近くに居たヒュドラーの生存は絶望的だった。
――やっと炎の渦が止んだその場所には案の定ヒュドラーの燃えて黒こげになった遺体があった。
遺体と言うよりは燃えカスと言った方が正しいかもしれない。
「ごめんね、ヒュドラー……。きっと、盾になってくれたんだよね?」
確かにヒュドラーはさっき居た位置より大幅にずれて、ネムの前に来ていたようだ。
ネムの目の前の足元に遺体……いや、燃えカスがあったからだ。
ネムは鼻の奥がツンとなって、涙が出そうになったが必死にこらえた。
――今は泣いてる場合じゃない!!
そう自分に言い聞かせて、イフリートを強く睨みつけた。


