そして、ふと何気なく外を見たネムの瞳に映ったのは――
東の空に浮かぶ、赤くて丸い物体だった。
それを見た瞬間、ネムはドキドキしていた。
なぜだろうか? 自分でも分からない。
ただ、恐怖でもあり、喜びでもあり、色々な感情が混ざっていることだけは分かる。
月ではない、その物体を近くで見てみたいという気持ちはどんどん大きく膨らんでいった。
「ネム、見てはならない。行ってはならない。エレン殿に言われたはずだ」
「うん……分かってるんだけど……でも、ごめん!」
ネムはディルクを置いて、大急ぎで物体の方へ走り出した。
横目で確認したのは、お婆ちゃんの部屋の電気が消えてたという事。
そして……後ろを見るとディルクが走ってついてきていた。
「お前はなんという娘だ! 後で叱ってもらわねばならぬな」
「ディルクも一緒に怒られるのよ!」
呆れた顔でディルクはネムの後を追いかけてくる。


