西の森を抜けてずっと先にある底なし沼は、名前で想像するよりもはるかに綺麗な沼だ。
とても透き通っていて、その水は調合に使うときとても役立つのでよく人が訪れている。
その沼には人魚が住んでいるのだが、警戒心が強いので滅多に姿を現さない。
だから、その人魚が食われたなんてありえない話だった。
「……使いの鳥がそれを知らせてくれてね。イライザや他の人たちと調べに行っていたんだ。だからこんなに遅くなってしまった」
「人魚を食らった奴の足取りは全く掴めていないのですか?」
「困った事に誰も何も見ていないんだ。それに、もし生き残りがいたとしても地上には出てこないだろうね」
ネムはポケットの中に入っていたチョコレート・キャンディを口の中に放り込んだ。
「決して人が少なくない場所なのに誰も見てないなんておかしな話ね」
「そうなんだよ。それに人魚は食われたわけじゃないんだ」
――これにはネムとディルク、そして陽汰まで首をかしげてしまった。


