「こんな天気の日なんて何もする気にならないじゃない。空が飛べない日なんてこの世の終わりみたいなものだわ」


 ネムの言葉は大袈裟だったが、気持ちはそれぐらいだった。

 ホウキで空を飛ぶことが大好きなネムにとって雷や雨、雪、さらに台風の日なんてありえないのである。


 そういう日は何もせず、いつもこうやって部屋の外をぼんやり眺めるのがお決まりのスタイルだ。


 ――と、遠くから鳥が飛んでくるのが見えた。



 足に手紙を持っているので誰かの元へ届ける最中なのだろう。

 ずっと見ていると、鳥が段々こっちへ近付いてきた。


 ネムに手紙を出す人は全くといっていい程いなかったので自分じゃないと思っていた。


 しかしまっすぐこっちへ飛んできて、更に嘴で出窓をコツコツ叩いていたのでその手紙は明らかにネムへのものだった。


 ネムは窓を開けて手紙を受け取り、鳥が飛び立つのを確認してから窓を閉めた。

 久しぶりに手紙が届いたので誰か全くわからなかった。


 封筒を裏返すと、クセのある字でサインがしてあった。


「アリーセだわ。あの子が手紙なんて珍しい。いったい何があったのかしら」