「ふん。あいつはモーショボーだ」
なんとか体制を立て直し、左肩に少し爪がくい込むのを我慢しながら陽汰は尋ねた。
「え?ディルクさんは知っているの?あの子」
「あいつはモーショボーという魔物だ。モンゴル語で悪しき鳥という意味だ。覚え・・・なくてもよい」
「でも……どう見ても一人の女の子にしか見えないです」
するとディルクは他の人に聞こえないように耳元で話し始めた。
――もちろんネムにも聞こえないように。
「あの魔物は狙いを定めた男の好みの女性になり、誘惑する。そしてその男がついてきたその瞬間、顔を鳥にして頭蓋骨を割り、脳髄をすする。そう簡単にあいつの正体を見抜ける物は中々おらぬ」
陽汰は全身に鳥肌が立つのを感じ、身震いした。
それを見てディルクはくすりと笑った。


