お婆ちゃんは右手で魔法薬の調合をしている鍋に指示しながら答えた。


「あたしがずっと一緒じゃ陽汰が楽しめないんじゃないかと思ってね。あぁ、もちろんこないだみたいにならないように、あたしも万全を尽くすよ。この苦労が泡にならないように、さぁさぁ噴水へ行っておくれ」



 ネムとディルクは最後までなんの調合か教えてもらえなかったが、渋々市場へ行くことにした。



「案ずるな。エレン殿に任せておけばよい」


 ネムはそれを聞いてとても嬉しかった。


 心配しなくていいという事に嬉しがっているのではなく、ディルクが陽汰を気にかけてくれた事に、だ。

 言い方はサラリとしていたものの、どこか温かいようなそんな気がしたのである。


 もちろん、ディルク自身はそんなつもりはなかったかもしれないが……