私はフェンスからそっと手を離し目を閉じ静かに身体を前に倒した…。やっと楽になれるよ…やっと…。


(殺すんだよ、杏子を)


悪魔が私に囁いた。

我に返ると右手がフェンスをしっかりと握りしめ身体が宙ぶらりんになっている。

(殺せ、殺せ、殺せ!)
悪魔の声は止まない。
私はその声に促されるかのように、フェンスをよじ登り、ガクガクと震えその場にすわりこんでいた。

今恐怖が襲う。

そして怯えは怒りに変わり憎しみを呼び覚ました。

〃死にたい〃はずの私は消え悪魔が心を支配していた。