「…カチャ、…」
何か食器のぶつかる音…かな。
遠のいた意識がゆっくりと戻る。
「あ…れ…?」
目を開ければそこは陽介の部屋。
「起きるのおせーよ。」
いつの間に着替えたのか、さっきと違う格好の陽介。
「え…あ、ごめん。」
陽介だけには言われたくないセリフのはずなのに、なぜか謝るあたし。
まだ意識がはっきりしない中、ベッドから起き上がってふと目にしたいつものテーブル。
そこには、
「ケーキだ…。」
ひとつの小さなホールケーキ。
「お前、食べたいって言ってたじゃん。」
そう、これはこの間たまたまとおりかかった駅前のケーキ屋さんに飾ってあった可愛いデコレーションケーキ。
あのときの陽介はまったく目もくれず、ただ
「行くぞ」
としか言わなかったのに…
本当はちゃんと見てくれてたんだね?

