fall in labo〜恋する研究室〜

おかゆは思ったよりもすぐにできた。

味は……大丈夫、自信がある。

時計を見ると、10時を過ぎたところだった。

早くしないと、終電に間に合わなくなっちゃう。


「もう、帰ろっかな。」


ポツリと呟いてカワサキを見る。

相変わらず苦しそうな寝息が聞こえている。

私は、はだけている布団を肩まで掛けなおした。

せっかく寝てるんだ、起こさないで帰ろう。

私は自分のバッグからメモを取り出すと、机の上に残した。


『おかゆを作ったので、温めて食べて下さい。何かあったら、電話ください。tell:090−●●●●−▲▲▲▲』


ここまで書いて、私は手が止まった。

私の名前、何て残そう……?

本当は、若菜って残したいところだけど、きっと覚えてないだろうな私の名前なんて。

結局私は、沢村と名前を書き込んだ。


「先輩、私、帰りますね。」


スースーと規則正しく繰り返される寝息だけが聞こえる。


「それから……、大好き。」


私はカワサキが聞いてないのをいいことに、とんでもないことを言ってカワサキの部屋を出た。