fall in labo〜恋する研究室〜

「沢村。」


薬を飲んで布団に顔を埋めたカワサキが私を呼ぶ。


「何ですか?」

「……帰るの?」


……かわいい。

今まで見てきたどんなものよりも、かわいい。


「そのうち、帰ります。」

「もうちょっと……、いてくれねぇかな。」


ホントに小さな声で、聞き取るのもやっとってくらいだったけど、私にはちゃんと聞こえたよ。

この一言は、絶対忘れない。


「いいですよ。私でいいなら。」


いつまでもいます。

さすがにこれは言えなかったけど。


「でも、カノジョさんに怒られちゃうかも。」


ちょっと探りを入れてみる。

やっぱり、気になるもん。

今日ぐらいしか、聞けないでしょ?こんなこと。


「いないよ、カノジョなんて。」

「……そうなんですか。」


意外だな。

絶対にいると思ったのに。