fall in labo〜恋する研究室〜

「あっ、えっと……おはようございます。」


何言ってんだ、私。

パニクる頭で必死に考えた言葉だけど、他に何かなかったの?

私はスッと手を引っ込める。


「……沢村?」

「はい、そうです。」

「手、置いてて。冷たくて、気持ちいい。」


何か、何か、何か……、どうしよう。

トロンとした目で私を見つめるカワサキ。

今日ほど、冷え症でよかった、と思ったことはない。


「あの、シート買ってきたんで、貼った方がいいです。あと、薬も飲んでくださいね。」


伸ばしかけた手をグッとこらえて、シートを手渡す。

カワサキはゆっくりと体を起こした。


「ふぅー。」


大きく息を吐く。

学校にいたときよりは、顔色がいいみたい。


「少し、よくなりました?」

「んー、少しは。」

「起きたついでに薬も飲んでくださいね。」

「うん。」


低くて鼻にかかった声、ゆっくりな話し方、潤んだ瞳。

いつもと違うカワサキが、不謹慎だけど色っぽいと思ってしまう。