大学3年の夏休みが終わり、私たちは研究室に配属された。

私は望み通りカワサキのいる研究室に配属となった。

浩実はその隣の研究室、きっと大声を出せば聞こえる距離。


「ヒマな時は、会いに来てね。」

「うん、わかった。」


研究室でヒマな時ってあるのか?

研究しろよって話だよな……、うん。


「若菜、心ここにあらずだね。もう私のことなんかどうでもいいんだ。」

「いやいや、そんなこと言ってないし。」

「若菜が友情より恋だなんて知らなかった。」

「あのさぁ、勝手な妄想はやめてよ。」


泣きマネをしていた浩実が私の困り果てた声で顔を上げ、イヒヒと笑った。

完全に遊ばれてる、私。


「若菜が嫌がっても、私が遊びに行くからね!」


浩実はそう言い残して、研究室へと入って行った。

いつまでたっても、私は浩実には敵わない。

ふぅー、っと大きく息を吐くと、私も自分の研究室に入った。

これから私の新しい日々が始まるんだと思うと、なんだか複雑な気持ちだった。

嬉しいような、不安なような……。