「寂しいなぁ、若菜と研究室が違うの。」


唇を尖らせて浩実が言う。


「違うって言っても、隣じゃん?」

「そうだけどぉ。」


浩実は私が同じ研究室を選ばなかったのが気に入らないらしい。

って言うか、私にこの研究室を勧めたのって、浩実だよね?


「やっぱり、若菜は私よりカワサキさん――」

「浩実、それ以上言ったら、本気で怒るよ?」


私は笑顔で浩実に告げる。

浩実はそれ以上何も言わなくなった。

だいたい私は、カワサキ、先輩がいるからってここに決めたわけじゃない。

ここの先生の研究には前から興味があったし、実験も楽しかったし、……先輩もいるし。


「はぁ。」


思わず吐いたため息に、すかさず浩実が突っ込む。


「どうかした?」


浩実、どうしてあなたはそんなに笑顔なの?


「いや、別に。」


私はやっぱり、カワサキが好きだ。

そんなこと浩実には、口が裂けても言えないけど。