甘い夏  煙草の匂い




「はい…あ、そうなんですか?…いや、大丈夫です…はい。」


…こんな時間に電話してくるなんて、非常識なヤツだ。

そんな自分勝手な考えを打ち消す為、真那の手をいじって遊ぶ。指先で撫でたり、軽くキスをしたり。


「…あっ…、…いえ、なんでもないです。…はい。」


電話先の百合子にバレないよう、必死でごまかそうとしている姿が可愛くて、もっとイジワルしたくなる。


「…早く終えろよ。」


繋いでいた右手をグッと引き寄せ、空いている真那の左耳元で囁く。

亀のように首を縮ませ、体全体で小さくなりながらも、会話を続ける。


「いえ、今のところは何も…。はい、ありがとうございます…。

え?…いえ、誰も…えぇ、家です。」


俺といる事も隠してるな?

次はどんなイタズラをしようか…そう考えていると「はい、ありがとうございます。おやすみなさい…。」と言って、電話を切ってしまった。


「…もうっ!お話できないじゃないですか!」


むくれて反抗してくる。


「真那が俺といる事を隠してるのが悪いんだろ?」


もっともらしい言い訳をし、さあ第2ラウンド…と近づくと「あっ!」と真那が何かを見つけたように驚いた。