甘い夏  煙草の匂い




― プルルルル -


ビクぅっ!!!


俺と真那の体が同時に跳ね上がった。

どうやら、真那の胸ポケットに入っていた携帯が鳴ったらしい。


「あっ…。」


現実に返ったように、目をキョロキョロさせながら、俺から離れようとする。

ダメ。離さない。

後頭部に手をまわし、再び顔を近づけるが、

「やっ…!」

…直前でかわされてしまった。


「ちょっ…待ってくだ…」

「やだ。」

「やだって…!も…」


「電話に出たもん勝ち」とでも言うかのように、急いで携帯を取り出し、左手で通話ボタンを押した。


…ちっ。


仕方なく体は離すが、空いている右手を取って勝手に繋いだ。

くすぐったそうに手を引くが、ガッチリつかんで離さないようにした。


「あ…もしもし?こんばんは…。」


右手は気にしないようにし、電話に出る真那。

内容までは聞き取れないが、漏れて聞こえる声からして…百合子だ。