「真那?」


名前を呼ぶと、さらに強く首を横に振る。


「…どうした?」


大粒の涙をボロボロと溢しながら、軽く俺を睨む。


「何も…」


ゆっくりと視線を外しながら、小さく呟いた。


「何も…私の事…知らないじゃないですか?」

「何も…って?」

「全部…です。」


そりゃあ…知り合ったばかりだし?


「もし…私が悪い人だったらどうします?」

「へ?」

「ホントはスッゴい悪い人で、上杉さん達を騙そうとしてたら…どうしますか?」



…真那の言いたい意味がわからない。



「なんで?騙そうとしてんの?」

「や…してませんけど…。」

「なんでそんな事言うんだ?」

「…。

…ごめんなさい。頭が混乱してるかも…。」


小さくため息を吐きながら、肩の力がゆっくりと抜けて行くのがわかった。

無理もないか…。今日はちょっと飛ばし過ぎたか?



「真那…今日は疲れたろ?もう帰るから、ゆっくり休め。」

ホントは帰りたくない…もう一度、自分家に連れて帰って、閉じ込めておきたい…離れたくない。


真那の頭を撫で、長い髪の毛を一束すくった。