甘い夏  煙草の匂い





首を縦にも横にも振らずに、ジッと下だけを見ている。


「なぁ…そうなんだろ?」

「…。」

2.3センチほど真那に近づき、なるべく優しく…を心がけて話かける。


「…もう、そいつらの事は忘れろ。今の身内は、社長だけだろ?」

そっと真那の手を取る。


「なぁ、真那。…甘えて欲しいってのは、何もねだる事だけじゃないんだ。

自分がツラい時にグチを言ったり、淋しい時に傍にいてほしいって言ったり…。

嬉しい事があったら、誰かに話したくなるだろ?そんな時は電話して聞いてもらったり…。

…俺らが普通に真那にしている事は、真那に甘えてる事なんだぞ?」


俺の言葉に、そっと顔を上げる。

涙で溢れ返った目は赤く充血していて、鼻の頭も真っ赤だった。


「…ぶはっ。」


別に笑うほどでもなかったが、その場を和ませたくてわざと笑ってみせた。


「…え?」

「いや…真那の顔…ひでぇ。」

「えっ…?」


驚いた顔から、ゆっくりと怒りの顔になっていく。

「ひ…ひど…」


俺の手を離そうとしてきたので、慌ててひっぱり、真那の体を再び抱き寄せた。