甘い夏  煙草の匂い






「はぁ?」


「だ…だからっ…」

「ちょっと待て!なんだよ、それ?」



いきなり予想外な言葉が飛んできたので、驚きを通り越して怒りが込み上げて来た。


「なんだよ『疫病神』って!?

いつ誰がンな事言ったんだよ!」


思わず掴んでいた肩を強く揺さぶってしまった。


「…つっ!」


力が入り過ぎていたのか、真那が小さな声で痛みを訴えた。


「あ…わり。」



パッと掴んでた手を離した。



相変わらず、真那は下を向いたままだ。





…待て待て、冷静になれ?

誰かがそう言ったのか?


『疫病神』なんて事は、誰かから言われでもしなければ、自分がそうだと思い込む事はしないだろう。


パパ…ヒゲオヤジ?いやいや、そんな事言うタイプじゃない。第一、疫病神を自分の娘にしようとは思わないハズだ。


百合子?進也?…んなアホな。


シゲさん?…あのノーテンキオバチャンが、そんな漢字を知ってるハズがない。






ふ…と、ドンピシャな人物が思い浮かんだ。






「もしかして…世話になってたっつー親戚に言われたのか…?」