甘い夏  煙草の匂い




俺の言葉に反論をなくした真那は、黙りこんだまま動かなくなっていた。


だが、ゆっくりと話し始めた。



「…甘える…。」

「そう。」

「…なんで甘えて欲しいんですか?」

「…は?」

「パパも、百合子さんも、進也さんもシゲさんも…上杉さんも。

私がどうすれば、納得してくれるんですか?」

「おい…」

「私はっ!…甘えたくてココに居るわけじゃない!」


急にわめき始めた真那に驚き、顔を覗きこもうとするが、しっかりと下を向いたままイヤイヤと首を横に振る。


「わ…私は…これ以上ないってほど…っく…」

「真那?」

「みんなにめいわ…っふっ…」


体はフルフルと震え、真那の顔から落ちた雫が畳にシミを作っていた。


「真那…ちょっとまて。」


一度落ち着かせようと、真那を抱きしめていた両手を肩に置いた。


「…がみ…」

「え?」


あまりにも小さな声だったので、近くにいても聞き取れなかった。


「何?なんつったの?」



真那は自分の髪の毛の先をギュッと掴みながら、こう答えた。









「…疫病神…なんです、私っ…」