甘い夏  煙草の匂い




「龍…おまっ…」


社長の顔がどんどん真っ赤になっていく。

バーの照明が薄暗いから…正確に言うと、ドス黒くなっていく…。



「いやっ…まだ、まだ未遂です!」

「未遂ぃ?未遂ってなんだ!?」

「や~…未遂…未遂ってなんでしょね?」

「てめ…」



一度は般若のような顔になった社長だが、胃の痛みのせいかショボ~ンと背中を丸めた。




「…社長、俺、本気なんです。真那にもキチンと告白してます。

もちろん、真那も俺が本気だって知ってます。

あいつの年齢も過去も関係ありません。毎日を一生懸命に生きている真那が好きです。」



一度は面と向かって言わなくてはいけないと思っていた言葉。

…弱っている時に言うのは反則だったろうか?



「あの子は…まだ16歳だ。」

「彼氏の一人や二人いてもおかしくない歳でしょう。」

「真那は…一般人だ…。」

「俺が業界人だから反対なんですか?一般人なら問題ないんですか?だったら…」




ヤバい。止まらない。