甘い夏  煙草の匂い




「…ホントに、仕事だけだったのか?」


話が一段落したかと思ったら、社長がボソリと聞いてきた。


「お前ら…すでに付き合ってんのか?」

「…どうしたんすか?急に。」

「真那の様子が変なんだ。」

「真那の?変って?」

「お前の話になると、急に落ち着かなくなるんだ。目がキョロキョロしたり、手がモジモジしたり…」



…ほほぅ。

つまり、俺を意識してるって事だろ?

そりゃ、あんだけ仕掛けといて、意識シテマセンなんて言われたら凹むけど…。


もっとだ。もっと俺を意識しろ。



「…龍太?」

「ハイ?」

「顔、気持ち悪い。」


お?…おぉ、顔が崩れてた…。



「お前…真那に手ぇ出したろ?」


1オクターブ低くなった声に、背中がヒヤリとする。


「…手ぇ…と申しますと?」

「とぼけんな。ハッキリ言ってみろ。」

「…腹、どうしたんですか?」


スリスリと右手で腹を擦っているのが気になる。


「…胃が痛ぇ。」

「んじゃ、聞かない方がいいんじゃないですか?」

「…。」

「…。」



…しまった。