甘い夏  煙草の匂い




「そういや今日、事務所来てたろ?」

「え?なんですか?」


水仕事をしていた真那には、よく聞こえなかったらしい。


俺が来るまでの間に飯を作ってくれていたなんて…もしかして、愛されてる?


食事後の皿洗いをしている真那に近づき、背後にピッタリ寄り添ってみる。


「ひゃあ!」


う~ん、相変わらずいい反応。


「今日、事務所に来てたろ?」

「あ…はい。本当はシゲさんの番だったんですけど、交替してほしいって言われて。」


シゲさん?まだ引退してなかったのか?


「真那に会いに行こうとしたら、進也達に怒られた…。」

「もう…当然ですよ。」


洗いながらクスクス笑っている。



誘拐事件の夜から、俺への拒否反応がなくなってきている…ような気がする。

現に、こうしてくっついていても、前のように硬直される事がなくなった。


俺の事、少し好きになってくれた…?

単に、触られるのに慣れてきただけとか…。


…イヤイヤイヤイヤ…。