甘い夏  煙草の匂い




「…お互い社会人なんだ。真那の仕事の邪魔だけはするな。わかったか?」

「あぁ…」


進也の熱弁と栄四郎の熱視線に、静かに頷くしかなかった…。


不思議なもので…これだけ叱られても悪い気はしない。

コイツらがメンバーで良かった…。




それから黙々と仕事をし、新しい曲が入ったDVD‐Rも提出された。


「オッケ。さっそく聞いて、詞をつけてくる。」


俺がそのDVD‐Rを受け取る。


「頼むわ。今度はバラードにしてみたから。」

「今度の曲は栄四郎か?」

「おぅ。梅雨時期に雨音聞いてたら、浮かんできた。」


栄四郎が曲を作るのは珍しい。何か思い入れがあるのか。



マナーモードにしていた携帯を確認すると、メールが1件。


【明日、カレーにしようと考えていますが、具のリクエストはありますか?カレーで大丈夫ですか?】



真那だ!


叱られ、心を入れ替え、仕事に没頭しようとしていた俺はどこかへ行ってしまった…。


「龍太、行くか?」


栄四郎がジョッキを持つフリをする。