やっとこさ梅雨も明け、本格的な夏…あぢぃ…。


しかしビルの中はやたら冷房がきいているので、肌寒いくらいだ。

うちの事務所も、例外なくガンガン冷えまくっている。音楽事務所がこれでいいのかねぇ…。


そんな事務所の廊下を歩いていると、前方でイケイケねぇちゃんにナンパされてる男が…。


「…進也?」

「お…おぅ!龍太!

んじゃ、ありがとうね。」


俺を見つけると、嬉しそうに小走りで向かってきた。


「サンキュ、助かったわ…。」

「何、ナンパされてんだ?」

「ナンパじゃねぇよ。あの人、社長秘書だろ?」

「はぁ?秘書って、あんな服装でいいんだっけ?」


後ろ姿しか見ていないが、キャミにタイトのミニスカ…。どう見ても、秘書らしい格好ではなかった。


「ひげオヤジに怒られんだろ?」

「そうそう、入院したらしいよ?」

「誰が?」

「ひげオヤジ。」

「何で?」

「糖尿。」

「はぁあ?」


つい出た大きな声で、イケイケねぇちゃんが振り向いた。…あ、ホントに社長秘書だ。