「大丈夫よ。団長は団長だけどいつもとは違うから」

……いつもとは違う?

「一体どういう――」

「先輩が催眠術をかけたの」
彼女が間髪入れずに言った言葉。

『催眠術』

「団長は頑固だからね。卑怯かもしれないけど、この方法で全てを話してもらうしかない。私たちには時間が無いの――」

「……御影」

俺も彼女たちの立場は重々承知だ。

「先輩、お願いします」

「任せておいて!」

俺と御影は先輩から一歩離れた場所で見守ることにした。


”×○※△□×○□※△……”

何やら呪文を唱え始める蘭。
右手には数珠が時折、言葉の強弱と共に揺れている。

「団長は……栗林恭介を知っているわね」

『ハイ』

「どうして知らないと嘘をつくの」

『閉ざしておきたい過去だったから』

「何故?」

『私はあの頃のようにもう笑えない。だから、昔の自分を知っている人物には関わりたくないの。過去の私を忘れたいの』

「笑えなくなったのは理由は?」

『中学に入ってクラスの男子から苛められるようになったの……。私がとろくてのろまだったから。苛めから逃れるためには、冷徹で怖い雰囲気を出していれば誰も近寄って来ない。これでいいんだって思っていた』

「もう仮面は取っていいのよ」

『……仮面』

「もう冷徹でいる必要もないわ。あなたらは素敵な仲間がいるんだから」

『仲間……。私の仲間』

そう言いながら愛美姉さんは気を完全に失い倒れてしまった。