「どうして会社に来たの?」


あの時別れたはずなのに。

慧の気持ちが分からない。



「謝りたかったから」



街灯なのか、月の明かりなのか


こんな夜でもはっきり見える慧の顔は


瞳は

どこまでもまっすぐで


しっかりとあたしをとらえている。


その視線に

あたしはただ見れずにきょろきょろしているだけ。


慧よりも大人なのに。

・・情けない。


「俺さ、本当は前から葵の事、知ってた」

「へ?」

前・・から?

「覚えてない?葵が彼にフラられそうって言っててさ」


あたしが・・フラれた日。


「あの日からずっと待ってたんだ。葵とまた会えるのを」


いつの間にか離れていた距離が近くなって。


あたしのすぐ前には慧の顔。


その距離に

慧の視線に


あたしの心臓はもう爆発寸前。


なのに、あたしの気持ちも知らない彼は

優しくほほ笑みながらあたしの右頬を優しく撫でる。


その手は少しだけ冷たいけど。

でも不思議といやじゃない。



「けい・・」