何も言い返すことができない。


反論できない。


あたしが全部悪いんだもん。


本当、あたしは最低だ。


「申し訳ありません。」


こんなんじゃ、

響汰のお嫁さんになる資格・・ないよね。


「失礼します」


ぺこりと頭を下げて

レストランを出ようとしたその時


「片桐さん」


聞き慣れた声が聞こえて下げていた頭を上げると。


「え?」


これは一体、どういう・・


「今日はありがとう、龍崎さんのおかげで大変助かりました」


そう言いながら笑顔でこちらにやってくるその人は


「け」

あたしの声にウィンクをして響汰のお母様の方を向く。

「あなたは?」

「失礼、私は片桐さんの同じ社の者です」


深々とお辞儀をしてから

「本日は婚約者のご両親とのお食事と聞いていたのですが
急に海外からお客様をもてなすことになりまして。
彼女に協力していただいたのです。」


嘘ばっかり。

そんなわけないじゃない。

さっきまであたしと一緒にいたくせに。


「ですのでどうか彼女を責めないで下さい」

「それでも」

「責めるならどうか僕を責めて下さい。
彼女は何も悪くないのです」

「そうなんですね・・」

響汰のお母様が慧からあたしに視線を移して

「葵さん、ごめんなさいね」

申し訳なさそうな顔をして謝る。

「いえ、こちらこそ。すみませんでした」

「誤解が解けて良かった。では僕はこれで」

笑顔で再び一礼してレストランを出て行く。

「素晴らしい方ね」

ご機嫌であたしに話しかけるお母様。


素晴らしい?

何処が?