「お前さんの彫刻の腕は、
 もう一人前じゃ、
 今度はその腕で
 わしを手伝ってくれんか?」

雄一は、少し考えた後、

「勿論、俺で良ければ
 何でも手伝いますけど…、
 もしかして俺の彫刻も、
 子供達に配るって事ですか?」

おじいさんは、ニヤっとして、

「そう…、じゃが今回は、
 空き缶の見返りはなしじゃ。」


 十二月二十四日、
この日は、雪が散らつく
ホワイトクリスマス・イブ。
夜九時、雄一は、
おじいさんの待つ
公園へと向かいました。
こんな遅くに会うのは始めてです。

「凄いっ、
 本物のサンタみたいだよ。」

なんと、おじいさんは、
あの赤いサンタの衣装を
まとっていました。

「ホーッホッホッ、
 今日は忙しくなるぞい。」

おじいさんと雄一の作った、
動物の彫刻がいっぱいに
入った、ゴミ袋大の
白い麻袋が四袋、
これを町中の子供達の家に、
配りに行くのです。

「うーっ、重い…、
 さあ行きましょう。」

雄一は、二袋をやっとの
思いで担ぎ、歩き出そうとすると、

「ホーッホッホ、
 ちょっと待ちなさい、
 手で担いで配っていたら、
 朝になってしまうよ。」

「えっ?
 車でも用意してあるの?」

雄一は立ち止まり、
振り向きました。

「ホーッホッホ、
 サンタといったら、
 乗り物は決まっとるじゃろ。」

そう言うと、
おじいさんは、右手の親指と
人差し指を口に入れ、
大きく口笛を吹き鳴らしました。