「あのーすみません、
 突然ですが、
 あなたの彫った彫刻に、
 とても感動しました。
 それで、失礼なのは
 分かっているのですが、
 俺に彫刻を教えて
 いただけないかと…?」

おじいさんの前に
歩み寄るや否や、
思い切ってぶしつけに
話し掛けました。
ダンボールでかたどった、
畳二条ほどの小さな部屋、
屋根には、
雨よけのブルーシートが
被せてありました。
その前の地面に、
ダンボールを敷き、
あぐらをかいて木彫りを
コツコツ掘っています。

 おじいさんは、年は
七十を越えているだろうか、
しかし、ホームレスにしては、
食うに困ってはいないようで、
全体的にふっくらしており、
穏やかそうに見えます。
おじいさんは雄一の
失礼な質問にも,ニコッとして、

「ホーッホッホ、
 わしは、サンタクロースに
 なりたいんじゃ。」

そのおかしな返答に、
雄一は目を丸くして、
おじいさんの顔を見ました。
確かに、おじいさんの風貌は、
ボサボサの白髪頭と、
伸び放題の白髭は、
サンタクロースに似ていました。

「わしのサンタの仕事、
 手伝ってくれるのなら、
 なーんでも教えてあげるぞ。」

「サンタクロースですか?
 まあ、彫刻教えて
 いただけるなら、
 何でもお手伝いしますけど…。」

“サンタクロース…?
 少しボケてるのか…?

と思いました。”