「よく出来てるよ、
 これ細部まで
 きれいに彫られてる。」

その見事な
出来映えに見とれる雄一は、

「これって、
 あのじいさんが作ってるのか?」

と聞くと、
子供達の一人が答えました。

「そうだよ、
 ゴミ袋いっぱいに
 空き缶を拾って持って行くと、
 一つ、くれるんだ。」

美術専門学校に
通う雄一です。
それなりに美術に
興味のある雄一は、
その彫刻の出来がどれ程の物か、
ある程度分かります。
少なくともその彫刻は、
雄一には勿論の事、
並大抵の腕では出来ない事、
いわゆるプロに
よる物にさえ見えました。

 おじいさんの作った彫刻に、
吸い込まれるように
見とれる雄一に、
子供達の一人が、
口を寄せて耳打ちしました、

「この動物の彫刻はね、
 生きてるんだよ。」

「えっ?」

そう言うと、
他の子供達が走って
公園を出て
行こうとするのを見て、
その彫刻を掲げながら、
走って公園を
出て行ってしまいました。

「生きてる…、
 ように見えるってか?」

雄一は丁度、学校で、
彫刻を専攻していました。
彫刻を学ぶ者として、
生きているような彫刻を
彫る人に、彫刻を教わりたい
という衝動にかられました。
そう思った時、
雄一は、既に
おじいさんの方に
歩き出していました。