二日後、雄一は、
新聞に、大変気に
掛かる記事を見つけました。

 それは、昨日、
とある美術館に
置かれている彫刻が
紛失したとの事、
それはソリを引いた、
大きな原寸大の
トナカイの彫刻…。

「これって、昨日の
 おじいさんが呼んだ
 トナカイの事じゃ…。」

そう思い、更に
読み進めていくと、
そのトナカイの
彫刻を彫った芸術家に
ついて説明が書いてありました。

 『山本 清一朗』。
その人は、動物を
彫らせたら右に出る者は
いないと言われている
伝説の大彫刻家。
一年程前、行方不明になった
というのですが、
その後の消息は分からないという事…。
まさか、あのおじいさんが…、
しかもホームレス…。
しかし、読み進めていくと、
更に詳しい事が書いてあり、
雄一は確信しました。
山本 清一の別名は
『命を彫る彫刻家』、
まるで生きているように
動物を彫り上げる彫刻家。
まさにおじいさんの
作る彫刻が、
その表現にピッタリな事が、
あのおじいさんが、
山本 清一朗である事を
証明していました。

「凄い人に
 教わってたんだなあ。」

おじいさんは、
子供達の為に、地位も名誉も、
お金も捨て、
サンタクロースになったのです。

 ある夜、
一度寝静まった雄一は、
物音で目が覚めました。