「あたしさ。陽向の言うとおり、愛されたことがないのかも。だから愛し方がわからない。そんな気がする」

「愛されてるだろ。この俺様に」

「…はいはい、そういうことにしておく」

「だから、あんたは一言多いんだよ」

「『あんた』じゃないよ。『心愛』だよ」

「呼んでいいのかよ」

「え?」

「女の下の名を呼ぶってことは、そいつを大事に思うってことだろ? そいつと恋仲にあるって…いうことだろ」

陽向が、振り返ってあたしの顔を見てきた

あいつは真面目な顔をしている

「は?」

あたしは間の抜けた声を出した

「違うのかよ」

「違うと思うけど」

「俺の中でそういう決まりなんだよ」

「知らないよ。陽向の決まりなんて!」

「そういえばそうだな。あんたはもう俺を下の名で呼んでたな」

「何が言いたいの?」

「俺は、付き合ってる女にしか下の名を呼ばないって決めてるんだよ。特別な相手しか、名を呼ばない。それが好きな女に対する礼儀だと思ってる」

「ふうん」

「なんだよ、その力の抜けるような返事はっ!」

「感心してんのよ」

「ああ、そうかよ」

あたしたちは、再び背を向け合って横になった

なんで、あたしたちって口を開くと喧嘩みたいになっちゃうのだろう?

昨日から、普通の会話をしたことがあったっけ?