「そのままの意味だけど。ファイル、下に置いてあったはず」

陽向が、メモ用紙をぺらっとひっくり返す

「『早く家を出ていけ。出て行くまで帰らない』…んで、新しいアパートの物件をテーブルの上に置いて、男とホテルにしけこんだわけだ」

あたしの書いたメモを読み上げた陽向が、メモ紙をくしゃくしゃに手の中で丸めると、ベッドにどっかりと尻を沈めた

「ここに来たのは成り行き。友達の家に泊まろうとしたら、コンパで良い感じになった男がいて…それだけ」

「『それだけ』……じゃないだろ」

陽向が舌打ちをすると、長い足を組んだ

「なによ、あたしの勝手でしょ?」

「んで、明日は腰が痛いからお休みしまーす…とでも言うのかよ!」

「それもいいかもね」

なによ、あんたには関係ないでしょ

あたしがどこで何をしようと、文句を言われる筋合いはない

なんで苛々してるのよ

なんで怒ってるのよ

「…ざけんなよっ! 俺は不真面目なヤツは好きじゃねえ」

「なら嫌いになればいいでしょ!…てか、さっさと嫌いになりなさいよ。他のマネを探せばいいじゃない。陽向のためなら、どんなにきつくてもマネをやりたいって人の一人くらいいるんじゃないの?」

「ああ、いるさ。あんたを首にして、マネをやりたいって名乗りをあげている人を俺は何人か知ってる」

なによ…それ

なら、その人にやってもらえばいいじゃない

なんであたしがマネをしなくちゃいけないのよ!

「じゃあ、その人に……」

代わってもらおうじゃない、と言おうとする前に、陽向が覆いかぶさってきた

ベッドに叩きつけられるようにしてあたしは、仰向けになった

倒れたあたしの眼前には、怖い顔をしている陽向がいた

「いい加減にしろよ…この馬鹿女」

陽向が呟くと、唇を重ねてきた

無理やり口をこじ開けてくると、舌を絡めてきた