おじさんの知り合いのスポーツ選手ばっかしか見てなかったわ

彼氏したら自慢できそう人と知り合いになりたい…ってしか考えてなかった

年が近くて、有望視されているような若者を知りあえたら、どんなに鼻が高いだろうって思って、親しくなれそう人ばかり目で追ってた

モデルってなんかひ弱そうで、ナルシストってイメージが強くて、あまり親しくなりたいって思わなかった

いや、桜嗣さんみたいな人は別格よ

素晴らしい人だと思うし、格好良いと思う

桜嗣さんの自叙伝も写真集もあたしは持っている

映画化したDVDも持っている

熱狂的なファンではないけれど、桜嗣さんには惹かれる

一人の女性を愛し続ける熱い思いと、モデルへの仕事の信念を貫く姿勢には素晴らしいって思ってる

尊敬している

あたしもそれくらい熱中できるものがあったら…なんて思う

だからってイコール息子もファンになるとは、限らない

あたしはまた陽向に視線を送る

水筒を、女性モデルのマネに返すと、カメラの前に戻っていく

休憩時間が終わったのだろう

レンズの前に立つ陽向の顔は、草食系男子になっていた

「あたしの何を見て、好きになったのか…」

あたしは首をかしげた…ていうか、桜嗣さんの勘違いだと思う

「人が人を好きになるのに、それほど大きな理由なんて必要ないんだよ。俺はそう思うよ」

桜嗣さんが、遠くを見つめて微笑んだ

「いやあ…それでもあたしを好きになる人はいないと思う」

「そう? どうして本気になることを否定するの? 嫌な思い出でもある?」

「え?」

中学の頃の自分の姿を思い出すと、首を横に振った

「何を…思い出を作るような出来事なんて」

あたしは自分の足元に視線を落とした

「…って、嘘をついても仕方ないんですけどね。中学のときに片思いをしてた相手に裏切られて、それから怖いんです。それだけ」

桜嗣さんがポンポンと肩をたたいた