ツギハギの恋

道路沿いを一時間ほど歩いた頃、通り過ぎるバスが恨めしくなってきた。


このまま歩いてもひなたの記憶に何の変化もない気がする。

チラリとひなたを見ると景色をぼんやりと見ていた。



「先輩、次のバス定でバス乗りません?」

「ん。俺はもう少し中田さんと手繋いで歩きたいんだけど」


ひなたはあたしを横目にして繋いだ手を揺らした。


くっそ、嫌って言えねーだろーが。


「じゃ……あと30分くらいだし歩いて帰ります」


疲れてきたけどここまで来たら仕方ない。
心なしかひなたが嬉しそうに見えた。


相変わらず無表情で素っ気ないけどひなたはあたしに心を開いてくれてるのかもしれない。


もう一度聞いてみるか……。



「先輩、何処に住んでるんですか?」

「……内緒」

「ですよねー」



やっぱそこ言わねーのかよ!


ため息を小さくついて空を見上げると灰色の雲が広がってきていた。

天気が怪しい……。