ツギハギの恋

二度とやらないと思っていた。
学校から家まで歩きで帰るなんて……。


でも言い出したのはあたしだ。

ひなたが何か思い出せばと思い、あの日みたいに手を繋いで学校から歩いて帰ってみることにした。


ひなたは何の戸惑いもなく一つ返事で歩いて帰ることを了解した。


繋いだ手が何だか胸にくすぐったい。


しばらく歩いてあたしは様子を窺いながらひなたに尋ねた。


「夢前先輩。この辺り……見覚えありますか?」


「別に何とも」


ひなたを見てもこれと言って表情に変化はない。



そう言えばひなたは自分のことすらわからないと言っていた。

自分を忘れるってどんな感じなんだろう……。

今でもコイツ犬になったりするのかな?




「あの……夢前先輩って犬に変身とかって出来ます?」

「何それ。何で犬?」


素で聞き返されて今のひなたは犬にならないことがわかった。

出来ないんじゃなく、忘れてるだけで変身しないのかもしれない。