ツギハギの恋

一体どれくらいの人に見られただろう。

渡り廊下なんかで泣くもんじゃない。


号泣してひなたの肩に顔を埋めていたから人数まではわからない。
あたしらの横、数人通り過ぎる気配だけは感じた。


しばらくして落ちつくとあたしはゆっくりひなたから離れた。



「中田さん大丈夫?」


感情のない声でひなたが俯いたあたしの髪を撫でる。


「……はい。夢前先輩」



やっぱり記憶は戻らない。


痛いな……。

夢前ひなたが初めて見せた笑顔はあたしの胸を締め付けて離さなかった。

まだ繋がれたままの手に気付いて鼻を啜って顔を上げる。


「先輩?」

「やっぱり俺、君を知ってる。泣いてる君を見て思ったんだ。痛い……悲しい」



ひなたはあたしの手をギュッと握って寄り掛かるように抱き着いてきた。

突然過ぎてあたしは言葉もでない。



「これ何だろうね。俺、どうしたらいい?」



ひなたに抱き着かれながらワタワタしていると渡り廊下を部活中の生徒がチラ見して通り過ぎた。



「あの……ここじゃ何なんで……とりあえず一緒に帰りません?」



あたしはひなたと手を繋いだまま下足室に向かった。